2016年3月24日木曜日

口内炎という副作用

<癌治療と口内炎>


症状
 癌化学療法による口内炎は、口腔粘膜の特徴を反映し、
唇の裏、舌、軟口蓋、頬粘膜のような柔らかい可動粘膜に起こりやすい4, 6)
 
口内炎は痛みを伴うが、これらの部位が経口摂取するものに触れると更に痛みを引き起こす。
 
そのため、口内炎はQOLの低下、摂食困難、脱水をきたし、
栄養状態や病態の悪化、癌化学療法の中断もしくは中止につながる。
 
また、口内炎は感染症の原因となるため、癌化学療法施行中の骨髄機能が低下する時期には、積極的に管理する必要がある7)

発現機序
 抗癌剤が直接作用することで起こる口内炎と、
抗癌剤による骨髄抑制に伴う口腔内の感染で二次的に発症する口内炎がある。
 
発現機序としては、殺細胞性抗癌剤の直接的作用および誘導されるサイトカインやフリーラジカルによる粘膜の基底細胞への障害がアポトーシスを引き起こし、粘膜上皮形成を阻害することで口内炎が生じる5段階
(第1段階:開始期、第2段階:初期ダメージ期、第3段階:シグナル増幅期、第4段階:潰瘍形成期、第5段階:治癒期)の発現機序8)が提唱されている(図1、2)
 
 
第1段階:開始期
 はじめは粘膜の性状に視覚的な変化はないが、粘膜下では抗癌剤によってDNAが直接的に障害され、基底上皮細胞および上皮粘膜下細胞に細胞死が起こる。また、活性酸素を発生させ、結合組織やDNA、細胞膜を障害する。
 
 
第2段階:初期ダメージ期
 NF-κBのような転写因子の活性化によりTNF-α、IL-1β、IL-6をはじめとする炎症性サイトカインがマクロファージより産生され、組織障害やアポトーシスが進行する。
 
 
第3段階:シグナル増幅期
 炎症性サイトカインによってNF-κBなどの転写因子やMAPK経路を活性化させるなどのpositive-feedbackが起こり、組織障害は更に増幅する。なお、この段階においても視覚的には症状はみられないとされる。
 
 
第4段階:潰瘍形成期
 潰瘍形成が起こり、それに伴う疼痛、上皮細胞の栄養低下をきたす。また、粘膜障害による粘膜バリア能力の低下により口腔内感染リスクが高くなる。カンジダやヘルペスによる感染をきたした場合、その外観も大きく変化する。
 
 
第5段階:治癒期
 時間の経過とともに原因となっていた抗癌剤の影響が少なくなり、上皮細胞の増殖と分化が促進し、口内炎は治癒に向かう。
 
 

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